本好きさんに50冊の質問

 

 

 

 

Q01. 小学校・中学校のころに読んだ、おもしろかった本を2冊教えてください。

 「ダレン・シャン」 ダレン・シャン
 小学生の頃「人を殴り殺せそうなくらい分厚いから」という理由だけで読んだ。数ページ読んだだけで何となく「気持ちわるい話かも」という予感はしていたが、実際の所そうだった。でも翻訳した方の書き方が素晴らしくすいすいっと読めました。一度だけさらっとシリーズ通して読んだだけなので途中の話だとかは一切覚えてないのですが、結末だけはしっかりと覚えてます。凄く印象的というか、衝撃的な結末でした。小学生の頃の私にとっては。映画、コミック、そういうのもあるらしいけど、一切見てないです。

 「温室デイズ」 瀬尾まいこ
 中学生の頃、図書室の本棚の隅っこにあったので何となく借りた。「幸福な食卓」も一緒に借りたけど、こちらの方が何となく面白かったように記憶してる。でも結末は全然覚えてない…。確か主人公結局誰やねんってなった気がする。読解力が不足していたのかも。いじめの話である事は確かだけどぼんやりどこか浮世離れした小説だなあと思った。


Q02. 10代のころに読んだ、おもしろかった本を2冊教えてください。

 「斜陽」 太宰治
 やっぱりこれかなあと思う。いや、今も十代じゃないかという突っ込みとかはつまらないので置いといて。斜陽は「太宰文学だから」という安易な理由だけで読みました。その頃は「人間失格」を超える太宰文学はないだろうと信じ込んでいたので、この作品は衝撃的だった。主人公の夢のシーンを読んだ時はとても強烈で静かな裏切りを感じ、きっとそのシーンがなければ、出会えなければ、私は小説を書かなかっただろうなあ。全くの想像だけれど。

 「ゲド戦記 影との戦い」 アーシュラ・K・ル=グウィン
 これは十代の頃と言っても小学生の頃に読んだ。映画化だとかで話題になっている時に。ゲド戦記はこれだけしか読んでいないけどとても面白かった。最初は文体にどうしても馴染めなくて「何これ気持ち悪い」と思っていたけど、何となくもう一度借りてみたら(どのくらいの期間を置いたのかはもう覚えていないです)面白かった。同時に映画とは別物だと思った。


Q03. 最近読んだ、おもしろかった本を2冊教えてください。

 「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」 村上春樹
 先日のブログでも述べたのですが、もう一度紹介。個人的には「ノルウェイの森」よりも好み(同じ作者だからという理由だけで作品同士を比較するのは愚行ですが)。面白いとはまた違う感じもします。もっと複雑というか。でも結末には全然全く納得はしませんでした。設定がよく作られていて、謎が明かされた時の安堵感が凄かったなあ。

 「カラフル」 森絵都
 ツイッターで仲良く絡ませてもらっているフォローさんが「面白い」と発言していたので気になって購入。文体は好みではないし、少し安易すぎる口調の登場人物に好感は持てなかったけれども、純粋に「面白いな」と思った。魅力のある作品だったのだな。心に染みるというか。確か映画だとかもあったはずだけれども、これは果たして映像化が出来るのだろうか? という疑問が。


Q04. 徹夜して読んだ、おもしろかった本を2冊教えてください。

 「ノルウェイの森」 村上春樹
 徹夜というか、読んでいたら朝になり寝て起きて読んで寝て朝になりを繰り返し、完全に体内時計を狂わせた小説。最初は「どうしてこんな物が評価されているんだろう」と思いながら読んでいた。で、読み終わり時計を見て完全に体内時計が狂った事を自覚した瞬間「これか…」と思った。これも面白いとは若干違うけど、そもそも、徹夜で読み切る小説というもの自体、少ないのです。

 「銀河鉄道の夜」 宮沢賢治
 小学生、それも低学年の頃。二年? 一年? 本を読んで夜を越えた経験はその時初めてだったと思う。これは元々母の蔵書の内の一つだった。キッチンに向かい合うようにして立っている本棚(今はもうないですが)、当時の私と同じ目線のその場所にその本はあった。タイトルに惹かれて読んだ。「主人公とか登場人物の名前が複雑だ。分かりにくい」と感じたが、最後、結末を読んで母にどういう事か尋ねると「中学生くらいにもっかい読んだら」と言われたのでそうした。色々な事が分かったけれど、当時感じたものがそこにはなかった。何かちょっぴり哀しい。


Q05. 何度も読み返した本を2冊教えてください。

 「シュガーダーク 埋められた闇と少女」 新井円侍
 ライトノベル。これだけ読み返すライトノベルはこれだけだと断言出来る。ある時ふと手に取ったライトノベルが最後まで読めず、その後手に取った様々な、色々なライトノベルも結局最後まで読めず、「自分はライトノベルが嫌いなのだろうか?」と苦手意識を持っていたけど、中学三年? の時にこの本に出会った。表紙のイラストの可愛らしい少女に惹かれて買ってしまった。どうせ今回も駄目なのだろうと読み始めたら、これがとても面白く、あっという間に読んでしまった。

 「ブレイブ・ストーリー」 宮部みゆき
 やっぱりこれだ! と思う。小説を書きたい! という感情が生まれたのもこの頃。小学生か、中学生か、曖昧な境界線にいた頃だと思う。ジャンルは多分、ファンタジー、冒険もの。主人公が自分とそんなに変わらない(いや、小学四年生だから、どうだろう)年頃だったのでとても自分と重ね合わせた。しばらくこれ以外の小説を読む事が出来なかった。食べるのも寝るのも忘れひたすらに読んだ。学校に持って行き、帰省する時も持って行き、車の中でも酔うまで夢中に読んだ。


Q06. 映像化して欲しい(あるいはされた)、おもしろかった本を2冊教えてください。

 「」
 どうしても、どうしても、タイトルが思い出せない。非常に困った。中学生の頃に読んだ小説で、確か七つくらいの話で構成されていたように思う。この頃は狂ったように本を読んでいた期間だった。授業中も読みふけり酷い時には一日に何冊も読了した。作家宮本輝のエッセイ内の言葉を借りるなら、逃避。本達の内容が混濁し、もうどのくらい本を読んだかすら覚えていない。我ながら馬鹿な事をしていたと思う。だから、タイトルも作者も思い出せない。死んだ兄が妹の元へ帰って来て、そしてふらりとまた消える話。映画になれば面白いのに、と思った事だけは強烈に覚えているのに。すみません。

 「告白」 湊かなえ
 映画を先に観て耐えきれず小説を購入した。とても特徴的な書き方をしていて、好みじゃあないなあと思いながら読んだけれど構成が面白く、そんなに長くない小説ともあって、そんなに時間を消費せず読了。結末は前もって知っていたから身構える必要はないと思っていし、衝撃だとかもなかったけれど、淡々と告げられる事実がとても面白く、人間臭いってこういう事をいうんだろうな! と思った。


Q07. 読んで泣いてしまった本を2冊教えてください。

 「シェーラひめのぼうけん」 村山早紀
 児童書。小学低学年の時に読み、九巻でじわりと泣いた。本を読んで泣くという行為はそれが多分初めて。真っ直ぐで優しく勇気のあるシェーラがとても愛しくて、十巻で完結した時はもうこの物語は終了なのか。と落胆した。新シリーズが始まると最後のページに書いてあったが、自分は求めているのは「シェーラひめ」のぼうけんだったから、読む事はしなかった。六巻が特に好きでずっと手元に置きたいと思っていた。

 「あなたへ」 川崎愛美
 当時十五歳の少女が書いた小説だとして注目を浴びていたように思う。私はその時まだ小学生だった。本を全く読まない姉が珍しくこの本を購入してきて、珍しく読了した。「あの姉が読み終えた!」と驚いて私も読んだ。恋愛小説。手紙を書く形式で物語は進む。泣いた。とても泣いた。その時私は自分が将来文章を書くとは想像していなかったけれども、「あんたが十五歳になってもこんな文章は書けないでしょう?」と姉に言われて口論した事を記憶している。彼女は私にとっていつまでも十五歳であり、そして現在の私は彼女の年齢を越えた。けれども、彼女に対する言い様のない感情はまだ残っているなあ。


Q08. 人から教えてもらって読んだ、おもしろかった本を2冊教えてください。

 「不思議の国のアリス」 ルイス・キャロル
 名前は知っていたが、中学の先輩に紹介されるまで内容すら知らなかった。散らばる言葉遊びとアリスの可愛らしさ。不思議の国の気味悪さ。所々に挟まれる秀逸な詩。どれをとっても素晴らしく、二百年愛されて来た理由がよく分かった。色んな不思議の国を読んだが、最終的に翻訳者はやはり矢川澄子が一番だった。人に教えてもらう本自体あまりないのだけれど。

 「人間失格」 太宰治
 私は常々太宰さんが好きだと公言してきたが最初は母に教えられて読み始めたのだった。確か最初は重くて三日を掛けて読み切ったと思う。ひたすらな独白に共感が入り込む隙など無く、「どうやって読めばいいんだ?」と首を傾げながら読んだ。でも読み切った。その時にはもう太宰文学の虜になっていた。


Q09. おもしろかった外国の作品を2冊教えてください。

 「アルジャーノンに花束を」 ダニエル・キイス
 これもツイッターのフォローさんに教えて頂いた本。予備知識など全く皆無の状態で読んだものだから、最初はどんな話か全くつかめなかった。後半にいくにつれて結末が薄々分かって来て、「まさかねえ」と思っていたら本当にそのまさかだった。救いのない話のような。汚れた感情だとかそういうものを持ってしまったら、後戻りだとか、葛藤だとか、そういうものを考えながら生きて行くしかないのかしら、と。漠然。

 「デモナータ」 ダレン・シャン
 ダレン・シャンよりこちらの方が好みかもしれない。今もシリーズは続いているのかしら? でも凄く気持ち悪い話。とても気持ち悪い話。ファンタジーなのか、多分ファンタジーだと思う。でもハリーポッターだとかそういう類ではなく、もっとドロドロとしたもの。読んだのは数年前の話なのでもう内容はおぼろげにしか覚えてないのだけれど。


Q10. おもしろかった長い本を2冊教えてください。

 「ICO 霧の城」 宮部みゆき
 ゲームのノベライズ。あの宮部みゆきさんがゲームの、しかも「ICO」のノベライズをした! という理由で購入。ゲーム自体は数時間でクリア出来るとても削られたシンプルで澄んだものだったのに対し、この小説は兎に角設定が隅々まで行き渡った、完成された世界だった。文庫化されたと聞いたので書店で何となく探してみると、上下巻編成になっていた。長く感じたのは当然だったのか、と。この小説の中の少女はあのヨルダではない、と漠然と思ったけど、ここまで膨らます事が出来るのはこの方だけだと思う。

 「いま、会いにゆきます」 市川拓司
 今思うとそんなに長い話ではないのに不思議と「長いなあ長いなあ」と思いながら読んでいた。恋愛小説自体読んだ経験がないので、そのせいだったのかも。不思議で綺麗な世界で、青いカバーイラストも気に入っていた。今手元にそれはないけども。姉がドラマか映画を見て「あまり感情移入出来ないなあ」と言っていたけど、別に感情移入出来なくても、それはそれでいい気がした。そんな小説。


Q11. かっこいい! と思った本を2冊教えてください。

 「羅生門」 芥川龍之介
 どの本に収録されていたかはちょっとど忘れ。これは物語の内容というより、描写。「何でこんな格好いいというか、真に迫った描写が出来るのだろう」と思いながら読んでいた。これはどういうジャンルなのかしら。哲学のようにも取れる。ラストの一文が2パターンあるのは後から知ったけど、やっぱり書きかえられた今の形の方が私は好み。

 「理由」 宮部みゆき
 この人に偏るきっかけになった本。推理小説。推理小説は確かこれが初めて。この方の手法はやはり凄い。ページが進む。進む。変な汗を書く時すらある。「模倣犯」や「レベル7」も好きだけど、この、何とも言えない感じ(ちょっと違うか)はちょっと、他では味わえない、かも。かっこいいのはこの方かもしれない。


Q12. 次の中から質問を選び、全部で2冊、教えてください。
12-1. 家族(親戚・恋人含む)の本棚で見つけて読んだ、おもしろかった本を教えてください。
12-2. 誰かにオススメしたことのある本を教えてください(できれば評判の良かったものを)。
12-3. 何かの「きっかけ」になった本を教えてください。
12-4. おもしろかった短編集を教えてください。

12-1. 家族(親戚・恋人含む)の本棚で見つけて読んだ、おもしろかった本を教えてください。

 「人間の幸福」 宮本輝
 父の蔵書。父は母以上に文章を読んでいた(父の父、祖父の影響かしらと漠然と思っている。博識な人だった)と母は言っていたが、私はそのような場面に遭遇した事はない。けれども、今家にある本の八割くらいが父の蔵書らしい。この本はその中に紛れていた。カバーはなく、けれども保存状態がとてもよかった。父は恐らく、一度しかこの本を開かなかったのだろう、と思う。これも殺人が起こる話だけれども、殺されたおばさんの言う事は、全て正しかったのではないかな、と私は思った。

12-3. 何かの「きっかけ」になった本を教えてください。

 「タイヨウのうた」 天川彩
 好きなアーティスト、YUIがこの作品の映画に出演したので読んだ。ふんわりとやっていたギターを本格的に始めたきっかけになったと言えば、なった。ライヴに出たのは本当に貴重な体験だったなあと思う。主人公は太陽の光に当たる事の出来ない病気の少女。父親が独白するシーン(映画の方だったかもしれない。曖昧)で母が涙していたことを遠い場所で見つめていた事を覚えているなあ。


Q13. ずっと気になっていて、やっと読んだおもしろかった本を2冊教えてください。

 「遺書」 松本人志
 お笑いコンビダウンタウンの松本人志のエッセイ。私は大阪人なのでお笑いは勿論好き。特にダウンタウンが好きなのでずっと気になっていた。図書室の端っこでボロボロになって存在している事に気付いて借りた。彼は良くも悪くも傲慢で笑いに貪欲な人間であると思ったのと同時に、さっさと読めてしまう手軽さがいいなあと思った。エッセイを読んだのはこれが初めてだったと思う。エッセイをそんなに読んでいないので、「エッセイとは全部こんな感じに手軽なのかしら」と思ったなあ。

 「恋愛寫眞 もうひとつの物語」 市川拓司
 この方は別に好きな作家ではないけど、真っ白なカバーが厭に目に付いて、ずっと気になっていた。でもタイトルからして完全に恋愛小説じゃないか…、と思っていたので無視していたのですが、堪え切れずに図書室で借りました。思った通り恋愛小説でした。この方のお話は毎度納得のいく結末ではないのに、綺麗で優しい世界だからまいってしまう。恋愛小説は何となく苦手なのだけど。


Q14. すごい勢いで読んでしまった本を2冊教えてください。

 「雪国」 川端康成
 純文学、だと断言出来る作品。美術品、芸術品、そういった類を連想させる文章をこの方は書く。素晴らしい。誰もが一度は聞いた事のある冒頭部分、「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」の先を是非読んで欲しいなあと思う作品。私自身雪国というか、雪というもの自体と触れ合う機会が中々ない…。だからゆきぐにという単語に心惹かれ素敵で美しい何かを感じてしまうのかも。

 「キッドナップ・ツアー」 角田光代
 中学生の本ばかり読んでた時期に読んだ一冊(ちゃんとタイトル思い出せてよかった)。これはストーリーが面白くてすらすらと読める文体で一気に読んでしまった。主人公は小学生の女の子で、彼女の父親が彼女を誘拐して逃げ回るという話。結末を全く覚えていないから、多分そんなに衝撃的な最後ではなかったんだろうけど、爽やかな感じがして良かった。自動販売機のシーンが個人的にお気に入り。だった、気が。父親が娘を誘拐し逃亡。面白い。


Q15. 年を取ってからもう一度読みたいな、と思った本を2冊教えてください。

 「罪と罰」 フョードル・ドストエフスキー
 全然関係ないけれどこの方の名前は最初間違えて覚えてました。ロシア文学。凄く長くて改行も恐ろしくなくて、読みにくい! って思う人もいるだろうな、と思う。というか思った。主人公である元学生のロージャの思考は何と言うか支離滅裂で発想が理解出来なかったけれども、「森の中で一人でいるよりも、人混みの中で一人でいる方が孤独を感じる」みたいな告白にぼんやりとした共感を覚えた。共感した部分はそれだけかもしれない…。十代では読むのは早すぎたなあと思ったけど、読めて良かった。大人になって、おばさんになったら、もう一度読みたい。

 「ヴィヨンの妻」 太宰治
 とても短い話。ヴィヨンっていう響きがいいなあ。ヴィヨン。兎に角夫が自堕落でどうしようもない奴。当時の暮らしぶりというか、状況が知れて面白いなあと思った。いつの間にか終わっている作品。大人になってから読みたいと言うか、どちらかというと誰かの妻になってから読みたい。多分一回しか読んでないから記憶があやふやだけども。


Q16. タイトルが印象に残っている、おもしろかった本を2冊教えてください。

 「たとえば、世界が無数にあるとして」 生田紗代
 図書室でタイトルに惹かれて読んだ。思春期というか、青春時代というか、そういう時に一度は考える世間では「痛いなあ」とか「恥ずかしい」とか思われる事。生きる、死ぬ、もしもの話、パラレルワールド、そういう物が詰め込まれた話。もやもやしてる。凄いもやもやしてる。でもタイトルが凄く秀逸。「たとえば、世界が無数にあるとして」。タイトル凄くいい。カラフルなカバーもお気に入り。でも多分感情移入出来るか全く出来ないかの二択に分かれると思う。

 「そのときは彼によろしく」 市川拓司
 この方の小説はあまり読んでいないと思ってたけど結構読んでるなあ自分…。「〜によろしく」という言葉が好き。他人に任せた自分の言葉という感じがして。まどろみ、という言葉に親しみを覚えたのもこの本のおかげ。映画の方も姉と二人で観たなあ(姉は映画観賞が趣味でよくDVDを借りてきたり映画館に行ったりしている。私が付き合うのもしばしば)。青いカバーとイラストが好きだった。タイトルを思い出せない事の多い自分だけど、この本に限っては忘れる事はないと思う。


Q17. 無人島に行くなら持って行きたい、と思う本を2冊教えてください。

 「暗い所で待ち合わせ」 乙一
 「絶対ホラーやん…」と思ってたら全然そうじゃなかった。殺人を犯した男が、視力がなく全く目の見えない女の家に身を潜める話。男は悪者なのかと思いきや、女が寝ている間に熱くなりすぎたストーヴを弱めたり、女が怪我しそうになる所を助けたり。不思議な同居生活。女は薄々男の存在に気付いているけど気付かないふりをする。そういう距離感とかが非常に良かった。完全にこれもタイトル買いをしたなあ。一人暗い場所で読みたい。

 「海辺のカフカ」 村上春樹
 海辺って言葉だけで選んだかも…。でも村上春樹さんの小説は最低でも一冊持って行きたい。この本は上下巻編成だけれど。十五歳の少年が主人公というのも新鮮だった(この方の書く小説は大人の男性が主人公というイメージがあったから)。この本を読んでから幻想文学というものを知った。でもカフカという名前には言い様のないものがあるなあ。幼い頃から本棚で名前を見てたからかしら。


Q18. いつも本棚に並べておきたい、と思う本を2冊教えてください。

 「こころ」 夏目漱石
 「吾輩は猫である」と迷ったけどこちらを選択。この方はもう、「プロだ」と感じさせるものを持っている。「心」ではなく「こころ」という方が私は好み。柔らかく安心感が得られる単語だなあ。昭和、大正文学は本棚にあるだけで幸せになる。行き詰まった時とかタイトルを見てこころを落ちつけたい。そういう話ではないけど。どうでもいいけど、この方の顔立ちが好き。

 「人質カノン」 宮部みゆき
 短編集。正直「面白い」とは感じなかったけど、この本の中にあるタクシーの運転手の話が好きで、ふと思い出した時に読みたい。これもタイトルに惹かれて読んだ。手に取ってからあの宮部みゆきさんが書いたのだと気付いた。今思ったけど私はやっぱり読む作家に偏りがある。


Q19. もっと早く読みたかった! と思った本を2冊教えてください。

 「グリム童話」 (作者はグリム兄弟でいいのかしら?)
 中学生の頃に読んだ。幼い頃から、「シンデレラとか白雪姫とか、こんなに上手くゆく筈がない」と思い込んでいた。でも少なからず美しい話でいいという願望もあった。この話を読んでこっちの方が好みという話もあったし逆もあった。今の形を知った直後に昔のこの形を知りたかったなあ、と漠然と思っただけなんですけどね。灰かぶりが面白かった。

 「注文の多い料理店」 宮沢賢治
 中学の頃、母親と買い物に行った時に立ち読みした。その頃、宮沢文学はほぼ読了していたけれど、この作品は何故か読んでいなかった。読み終わったと同時に後悔して、何であの時読まなかったのだろう? と溜息を吐いた。もし「銀河鉄道の夜」を読んだ頃に読んでいたら、あの頃と同じようなものをきっと感じられたのになあ。


Q20. 衝動買いして読んだ、おもしろかった本を2冊教えてください。

 「涼宮ハルヒの憂鬱」 谷川流
 いきなり萌え系に飛んだなあと思ったけど、まあ、事実なので。これも読了する事の出来た数少ないライトノベル。友達に教えて貰った時は「ふーん」とだけ思っていたけど、書店で発見した時に「憂鬱」だとか「消失」だとか、好みの単語ばかりタイトルに踊っていたので購入(友達は紹介した時に涼宮ハルヒとしか言わなかった)。設定が好み。文体も面白い。評価されているのが良く分かったなあ。

 「舞姫」 森鴎外
 衝動とはまた違うけど、姉がニヤニヤしながら、「あんたなら知ってると思うけどさあ、この前読んだのよ、舞姫っていうえーと、知ってる?」「森鴎外でしょ?」「内容は?」知らなかったので自転車飛ばして買って来た。姉がやたら「エリスがあ、エリスがあ」と連呼していたので何だよそのエリスってと思いながら読んだ。「今読まなくてもどうせいつか習うよ」と姉に言われたが、そういうものじゃない。その時読みたかったのです。この作者は森鴎外、という響きが好きなので、さんを付けて呼べない。何故か無駄な装飾に感じる。


Q21. 教科書・授業・テストなどで知って読んだ、おもしろかった本を2冊教えてください。

 「三年峠」 李錦玉
 小学生の頃、勿論授業で色んな話を勉強したけど、印象に残っているのはこれだけ。確か小学三年生の時。発想が面白かった。三年しか生きられないけど、三年は生きれる。そう当時の私は思ったけど、結局、「何度も転べばいい、三年、六年、九年、と生きれる」という展開になってしっくりこなかったのも覚えている。でも面白かったなあ。

 「エルマーのぼうけん」 ルース・ガネット
 小学三年生の頃、先生に授業の中で紹介されて出会った。その先生は読書を愛する先生で、数少ない好感を持てる女性教師だった。持物を確認する場面がいつも好きで、その道具を駆使してエルマー少年が危機を上手に乗り越える場面が面白く、何回も読み返した。この先生は多分、私の読書人生の何かにきっかけになった。彼女がこの本を紹介してくれていなかったら、今ほど本を読んでいなかっただろうなあ、と根拠もなく思う。名前も顔ももう思い出せず、あの小学校にももういないですが。


Q22. 好きな作家さんの本の中から、特におもしろかった本を2冊教えてください。

 「津軽」 太宰治
 太宰治の生きた街や場所、彼の取り巻く人間関係がうっすらと分かる小説。仮名遣いが今と形式が違っていたけど、読みやすかった。風情や風景をよく感じさせる描写が多く、心理的な描写もあり、面白いというか、尊敬、憧れの念を覚えた作品。

 「駆込み訴え」 太宰治
 うわあ、太宰文学ばかりで本当に申し訳ない。捲し立てるような描写と台詞、言葉選びが兎に角秀逸。何故作品はこうも疾走感に溢れ他の作品よりももっと真に迫った描写なのだろうと調べたら、この作品は、「作者本人の口述筆記で一気に描かれた」作品だったというのも含め面白かった作品。やはり彼は文豪だと感じた作品。


Q23. 続きを読みたい! と思った本を2冊教えてください。(シリーズだろうと無かろうと)

 「グッド・バイ」 太宰治
 もうこれ太宰作品選みたいになってる。でもこれしか当てはまらないのだから仕方がない。これは文字通り「続きが読みたい!」小説。未完。未完すぎる未完。読んだ時「ええええこれで終わりなのおおお」と思った。でも作者に「続きを読みたいです!」と言っても何となく書いてくれないような。この作品はいつまでも完成しない形が美しいのかもしれない。

 「風と共に去りぬ」 マーガレット・ミッチェル
 いやこれ、続編はあるのですけれど。あの続編は果たしてこの作品に必要だったのか? という議論がしばしば家族の中で起こる。あの続編はこの方とは別の、確かイギリスの女性作家が書いたという異例の作品だったが、もう別物となっていたのが少なからずショックだった。母はあの作品を「面白くない」と評価した。私も個人的にこの方の描く続編が読みたかった。


Q24. この本とこの本は合わせて読むのがオススメ、という本を1組教えてください。

 「蟹工船」 小林多喜二
 「車輪の下」 ヘルマン・ヘッセ
 お勧めというか何と言うか。社会の仕組みだとか労働者だとか、そういうものを求めていない人は読まない方がいいと、思う。どちらも暗い話なので。蟹工船は特に陰鬱になる気が。お勧め、うーん。お勧めって難しい。


Q25. これまでの質問では言い切れなかった本を、2冊教えてください。

 「ローマの休日」
 作者が分からない。完全に映画のみの作品だと思っていた(映画の方は観ていない)。図書室で見つけた。最初のページにはオードリー・ヘップバーンの美しい微笑みの写真が印刷されていた。彼女の顔をまじまじと見つめたのはそれが初めてだった。王女の苦労、簡単に作れる微笑、そんな彼女の一日の休日が描かれる。イタリアに一度行ってみたいなあ。豪奢で煌びやかな文化というものに魅力を感じる。

 「坊っちゃん」 夏目漱石
 旅行先、愛媛の道後温泉の旅館のテレビの下に無造作に置かれていた。多分作品の舞台がそこだったからだと思う。前に泊まっていた人間の私物か、旅館の持物か、いまいち判断に困ったが拾って読んだ。「たった数日しか泊まらないのに、読み切れるの?」と文章を読む事に慣れていない姉に尋ねられたがそんなに長くないのでさっと読めた。そして帰る時テレビの下に置いて来た。今は誰の手に渡っているのだろう。


■製作・配布:TEIM(http://silvery.whitesnow.jp/)

 

2010年11月21日。

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